Column:03 柔らかい純銀を、日常使いできるジュエリーにするために

 

前回のコラムでは、シルバージュエリーと呼ばれているものの多くに使われている銀合金「SV925」と、『four seven nine』が使う純銀「SV999」との違いについてお伝えしました。

今回は、『four seven nine』が割り金を使わずに、柔らかい純銀にどのような加工を施してジュエリーを作っているのかをお話します。

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ジュエリーの大量生産に向いている鋳造加工

金属製のジュエリーの主な製造方法は、「鋳造(ちゅうぞう)」と「鍛金(たんきん)」の2種類です。

同じサイズや形を量産しやすい方法が「鋳造」です。金属を熱で溶かし型に流して成形していく、古くからある製造方法です。

鋳造法のなかでも、ジュエリーは「ロスト・ワックス・キャスティング法」が主流です。地金やワックスで原型を作り、シリコンゴムの鋳型にワックスを流し込んでできたものを鋳造する方法です。

鋳型から同じサイズやデザインのジュエリーを大量生産することが可能なため、有名ブランドの多くは加工しやすい「SV925」を使い、この方法で作っています。

鋳造後は、ジュエリーの表面を研磨して滑らかにしていきます。

「SV925」は銅を含んでいるので、表面に黒い酸化被膜ができます。それを削るか、薬品を使って除去する作業が鋳造後に必要になります。

ちなみに、『four seven nine』のアイテムのほとんどは「鍛金」技法でひとつずつ手作りしていますが、この鋳造法を用いているものもいくつかあります。

鋳造後は、磨くだけで純銀(SV999)特有の鏡のような明るい光沢が表れ、いつもほんとうに白く美しいと感じます。白く見えるのは、金属の中でも反射率がとりわけ高いからです。

純銀は黒ずみが出にくいのも特徴です。実際、デザイナーの倉田は普段から入浴中も着けっぱなしにしていますが、黒ずみに関してはほとんど気になりません。

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鍛金加工で日常使いに適した硬さに仕上げる

金槌などの道具で叩きながら、金属を成形していく方法が「鍛金」です。

叩くことによって金属組織の粒子が均一になり、柔らかい純銀でも、日常使いできるジュエリーに適した硬さにすることが可能です。

叩いて硬くなった地金を無理に曲げようとすると、割れてしまうこともあります。

そこで「焼きなまし」という熱処理を行い、硬くなった純銀を柔らかい状態に戻します。熱を入れて柔らかく戻したあと、水に入れて急冷し、再び叩いたり、曲げたりといった加工をしていきます。

例えば、『ぐるぐるリング』と私たちが呼んでいる何重にも重なりあうデザインのリングがあります。太さのあるものは、ワイヤー状の純銀の地金を加熱して柔らかくしながらカーブをつけて成形します。熱して、冷やして、巻いて、叩いて、といった工程を何度も繰り返して作っています。

道具を使い分け、強弱をつけたり角度をつけたりして叩くことで、ジュエリーに模様を打ち出すこともできます。全て手作業で行うため、ひとつひとつ微妙に仕上がりが異なります。

『four seven nine』のほとんどのアイテムは、このようにひとつずつ鍛金して仕上げています。

純銀素材を活かす加工法に試行錯誤する日々ですが、最初から最後まで自分の手を離れることのない、プリミティブな手仕事にやりがいや楽しさも感じています。

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純銀ならではのアイテム、「イヤカフ」と「バングル」

生活する中であらゆるものと触れることが多い指輪は、それなりの硬さが必要とされます。

一方で、純銀の「柔らかい」性質を最大限に活かしたアイテムが、「イヤカフ」と「バングル」です。

イヤカフは簡単に装着できる分、「うっかり落としてしまう」こともあると聞きます。

『four seven nine』のイヤカフは柔らかく開閉が可能なため、耳につけた後に少しだけきゅっと力をいれることで、自分好みのフィット感にすることができます。

バングルに関しても「好みのサイズ感のものになかなか出合えない」、とのお声をよくいただきます。

太いバングルをゆったりと着けることを好む女性もいれば、手首にぴったりおさまる細いバングルを好む男性のお客さまもいらっしゃいます。

『four seven nine』のバングルは、サイズを選んでいただいた後に手首にあった形に調整することで、自分好みのフィット感にすることができます。

混ざり物がある鋳造品で同じことをすると、硬さともろさがある故にポキッと折れてしまうことも。特に太さのあるものは、硬くて調整が困難です。

純銀は柔らかさだけじゃなく、粘りがあるから着用して調整することが可能なんです。耐久性も担保した、絶妙なところで仕上げていますので、安心して日常使いしていただけます。

定期的に開催しているPOP-UP STOREにデザイナーであり職人の吉田が立ち会う場合は、その場でカットしたりカーブを変えたりしながら、お客さまにしっくり馴染むような形に調整することも可能です。

心地よいと感じる、自分好みのサイズのジュエリーをぜひ身に着けていただきたいと考えています。

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